おはようございます。布施淳です。
急性大動脈解離
循環器医が扱う病気の1つに「大動脈解離」や「大動脈瘤」があります。
急性心筋梗塞と同様に、あるいはそれ以上に死に直結するような病気です。
このブログでも以前、何度かは触れたことがあります。
例えば、大動脈解離の怖さを書いた記事
受動喫煙と大動脈疾患
この急性大動脈解離を含めた大動脈疾患による死亡が、受動喫煙により約2倍に増えるといったことを示唆する研究が最近発表されました。
「Passive smoking and mortality from aortic dissection or aneurysm」
(Atherosclerosis. 2017 Jun 9;263:145-150.)
日本発!です、筑波大学からの論文です(プレスリリース)。
約5万人弱を対象としたコホート研究であり、平均16年間追跡しています。質問紙により調べた受動喫煙を含めた喫煙の程度と、大動脈疾患による死亡の関係を調べました。結果は、下図です。
※ハザード比は受動喫煙の程度が低い群を基準とし、性別、年齢、Body Mass Index、高血圧の有無、アルコール摂取、ストレス、散歩、教育、仕事、地域にて調整。図中の●はハザード比を、その上下の棒が95%信頼区間の範囲を示す。
http://www.tsukuba.ac.jp/attention-research/p201707311400.htmlより
大動脈疾患での死亡率が、喫煙で4倍、受動喫煙で2.35倍
この図からわかるように、受動喫煙の程度が低い群の大動脈疾患での死亡率を1とすると、喫煙者は4.35倍の死亡率。受動喫煙の程度が高い群は2.35倍という高さでした。受動喫煙を家庭内と家庭外でわけた解析では、なんと家庭外での受動喫煙の悪影響がより高かったとのことです。外食店での禁煙を徹底することが強く推奨されることを後押しするデータです。分煙では、副流煙の悪影響を予防できないこともわかっています。
東京オリンピックで日本の恥を世界中に晒すのか?
そんな中、この現実。
鈴木俊一五輪相 「受動喫煙…禁煙原則にするのではなく、徹底した分煙で実現すべき」
本当にがっかりです。
2017年4月でのWHOの視察では、こんなことまで言われたことが報道されました。
http://www.asahi.com/articles/ASK4G5V8CK4GUPQJ00G.html
「日本の受動喫煙対策は世界では最低レベルの政策だと評価され、前世紀並みに遅れています。1980年代後半、新宿の回転すし店に行きましたが、喫煙者がたくさんいました。数年前、同じ店に入ると両隣がまた喫煙者でした。タイムワープかと思ったほど、たばこ対策は何も変わっていません」
経済的に沈下傾向の日本ですが、更に悪いイメージが上塗りされそうです。
禁煙学会によると、鈴木俊一五輪相は、タバコ業界から献金を受け取っています(下図)。日本国民や、日本を訪れる世界中の人の健康よりも、カネなんですかね。
(禁煙学会HPより http://www.jstc.or.jp/uploads/uploads/files/gakkaisi_170425_34.pdf )