長年勤めていた病院を8月末で退職しました。

命を救うために医師になり、命に直結する心臓の分野に身を捧げ、循環器救急の最前線で20年以上にもわたり尽力してきました。目の前の命を救い続けてきました。

そんな中、身体的健康も大事だが、それだけじゃないことにも気づきました。生命を救っても、幸せでない人が少なくありません。「生命」ってなんなのか?「幸せ」ってなんなのか? 疑問を抱き、「幸せ」の学問とも言える、ポジティブ心理学なども学びました。すると、一層にもっと俯瞰的に、包括的に、全体性を大切にした視点で命を見ることの必要性を感じ始めました。

心臓が止まることが、その人の身体的生命の終焉ではありますが、個人によって本当の「生命」のゴールは異なります。

医師は「生命」を扱う仕事ですし、患者も「生命」とともに生きています。たとえば、身体的な「生命」以外にも、心理的な「生命」、文化的な「生命」、社会的な「生命」がある、という考え方もあります。どの「生命」がどのくらい重要なのか、重要でないのか、その人個人個人で全く異なります。人生のモチベーションとも深く関連します。医師として「生命」を救うためには、患者と「生命」についての対話が必要なのです。

しかしながら、現状の保険診療の現場では、医師と患者の間の、その「生命」についての対話が、圧倒的に足りないのです。

 

本来の医療とは、患者の詳細な生活環境や行動様式、人間関係、思考パターン、価値観、生きがいなどの情報を医師患者間で共有することで、その人に本当に最適化した最高の医療が提供できるのだと私は思っています。習慣や環境を少し変えるだけで病状が改善したり予防できたり薬が減らせたりすることもあります。
研究結果(N Engl J Med 2007;357:1221-8.)からも健康維持や早期死亡の予防に、薬など医療介入が寄与するのは僅か10%くらいと言われ、一方で 日々の生活習慣、行動様式が40%を占めるのです。病院で薬をもらうよりも、日々の生活を見直す方が遥かに重要という解釈もできます。
そのためにも、患者と医師の対話が極めて重要なのです。
医師も、通常の外来では日常の多忙さから、どうしても薬などの医療介入の話が主体になってしまいます。

 

しかし、患者の生活環境や行動様式等を十分に把握できるような医師と患者の対話重視の医療の場を作ることは、通常の保険診療では時間的にも経営的にも困難なのが現実です。
そこで「保険診療」ではなく、「自由診療」主体で行う対話の場「ウェルビーイングクリニック駒沢公園」を作りました。

 

・「生命」についての対話、生きがい、人生の目的
・医療介入よりも重要な日々の行動様式、思考、環境
・根拠に基づき、かつその患者個人に最適化した医療

こんなことを大切にした場にしたいと思っています。

課題もありますが、これを足がかりにして、多くの方々のウェルビーイングを向上させることに貢献できればと思っております。今後とも宜しくお願い致します。

ウェルビーイングクリニック駒沢公園