焼肉やら、熟成肉やら、世の中には赤味肉が大流行りですが、医療者として若干の不安を感じています。
取り上げるのは、2016年のレビュー論文。非加工赤身肉、加工赤身肉と心臓血管系疾患やガン、死亡リスクの関係を調べた複数のコホート研究をまとめたものです。

 

「赤身肉(非加工)/加工肉の摂取と糖尿病とCVD(心臓血管疾患)」

 

縦軸が病気の相対リスク、横軸が病気の種類。

 

橙の縦棒:非加工赤身肉を100g/日習慣的に食べた場合の病気のリスク
赤の縦棒:加工赤身肉50g/日習慣的に食べた場合の病気のリスク

 

病気の種類は、左から、
糖尿病、脳卒中、脳梗塞、脳出血、冠動脈疾患、心不全(男性)、心不全(女性)

 

すべての病気で、罹患リスクは10%ほど高くなり、特に、加工肉では糖尿病が30%以上、冠動脈疾患が40%リスクが高くなります。全体に、加工赤身肉の方がリスクが高い感じです。

 

挙げられている疾患のリスクが高まることが示唆されるわけですが、
各疾患における研究の質が異なりますから、単純には疾患間のリスクの比較はできません。

 

 

「赤身肉(非加工)/加工赤身肉の摂取と癌リスク」

 

 

病気の種類は、左から、
乳癌、前立腺癌、進行した前立腺癌、肺癌、大腸癌、胃癌、食道癌、膵臓癌、肝臓癌、腎臓癌、膀胱癌、卵巣癌。

先と同様に、棒が高い方が罹患リスクが高まります。
このグラフを見ると、大腸癌のリスクは20%ほど高まっていますが、食道癌が40%以上と最も高いですね。

ただ、先にも述べたように、挙げられている疾患のリスクが高まることが示唆されるわけですが、
各疾患における研究の質が異なりますから、単純には疾患間のリスクの比較はできません。

 

「赤身肉(非加工)/加工肉の摂取と死亡リスク」

 

 

非加工赤身肉を100g/日、加工赤身肉50g/日を習慣的に食べていると、全死亡リスク、心臓血管疾患死リスク、がん死リスク、すべて高くなります。非加工赤身肉より、加工赤身肉の方がすべてのリスクが高いです。

 

赤身肉は嗜好品

ということで、赤身肉は非加工でも加工でも、習慣的に摂取していると、様々な病気を助長します。
特に、加工赤身肉の方が死亡リスクが高いです。

それでも赤身肉を食べる!という方は、これを承知した上で、時々、嗜好品として楽しむくらいをお勧めします。

 

 

追記

一般的には、赤身肉摂取と関連のある癌は大腸癌が有名です。上の2つ目のグラフでは、一見食道癌がもっとも関連がありそうに見えますが、そうではありません。上記にもしつこく書いてある通り、単純には疾患間のリスクの比較はできません。

食道癌のデータのメタ解析論文(Annals of Epidemiology 23 (2013) 762-770))を見ると、元となっている論文はcase-controlが19、cohort2なので、あまりエビデンスレベルは高くなさそうです。食道癌の機序は、不明のようで、未だ仮説ですが、肉の高温、含有する可能性のあるheterocyclic amines[HCAs]、polycyclic aromatic hydrocarbons[PAHs]、N-nitroso compounds[NOCs]といった物質、ヘム鉄の影響などが疑われているようです。