こんにちは。布施淳です。

 

冬は心臓病の季節です。

寒い冬は、心臓を患う方が多いです。血圧があがりやすかったり、心臓が縮こまったりしやすいためです。高齢者の心不全が圧倒的に多いですが、急性心筋梗塞の方も多いです。

急性心筋梗塞とは、心臓に栄養を与える冠動脈が急に閉塞して心臓が壊死する病気です。突然死の代表的な病気です。

もっとも重要な治療は、閉塞した血管を少しでも早期に開通させてあげる(早期再灌流)ことです。

循環器医は、急性心筋梗塞の患者が救急搬送されてくれば、真夜中でも、早朝でも、眠い目をこすって、早期再灌流療法(カテーテル治療;PCI)を施行するわけです。

最近では、テレビなどでも、カテーテル治療が紹介されたりしますので、認知度は以前より上がったと思います。ちょっとかっこよく紹介されたりもしますし、医学生や研修医などにもPCIは結構かっこいい治療手技と捉えられている面があるかと思います。

 

夜な夜な働く循環器医はどのくらい役立っているのか

そんな感じで、夜な夜な、PCIを施行するカテーテル治療を担当する医師って、えらい!命救ってる!カッコイイ!と思うわけです。それでは、本当にどのくらい貢献できているのでしょうか。少し古い論文ですが、興味深いデータがあります。

 

Explaining the Decrease in U.S. Deaths from Coronary Disease, 1980–2000

N Engl J Med. 2007;356(23):2388-98

 

米国の論文です。様々な医療の進歩により、米国では1980年から2000年の間に心臓死がざっくり半減しました。どのような要素が心臓死を減少させたが調べました。

 

・急性心筋梗塞(急性冠症候群)に対する初期治療 10%

・心筋梗塞後の二次予防(再発予防)  11%

・心不全治療 9%

・安定狭心症へのPCI、バイパス手術  5%

・その他の治療  12%

 

夜な夜なやるPCIも、10%くらいしか寄与していないようです。

 

 

予防の効果

一方で、心筋梗塞の予防のための治療は以下の通りの寄与具合です。

・コレステロールの低下  24%

・降圧治療  20%

・禁煙  12%

・運動  5%

 

また、悪化させる因子としては、

肥満   8%増加

・糖尿病 10%増加

 

夜な夜な苦労して働くカテーテル治療よりも、コレステロールや血圧をコントロールする方がよほど心臓死低減効果が高いのです。なんだかちょっとかっこよさそうな?カテーテル治療よりも、地味にコレステロールを下げる治療の方が倍くらい心臓死を減らしているのです。

 

「生活習慣」は名医

このデータは1980-2000年とかなり前のデータになりますので、現状とは多少異なるかもしれませんが、それほど大きな相違はないのではないかと思います。

何れにしても、「予防」が大変重要ということです。コレステロールにしても、血圧にしても、程度により薬物治療を考慮することになりますが、そこに至る前に、食事や、身体活動、睡眠、禁煙などの生活習慣是正で、肥満や糖尿病、高コレステロールや、高血圧を予防すれば、薬さえも使わなくて良いかもしれません。心臓病も予防できて、患者も、循環器医も皆ハッピーです。一人一人の心がけが、循環器医、カテーテル医の匠の技よりも優れているかもしれないのです。「生活習慣」は名医なのです。

高齢者はともかく、60歳くらいまでに発症する急性心筋梗塞の多くは、生活習慣是正を徹底することで、かなりの部分を未然に防ぐことができるのではないかと感じています。