布施淳です。こんばんは。

 

超高齢重症患者

平均余命を優に超え、平均余命も長くない超高齢者が、急性心筋梗塞で搬送されてきました。ここでは仮に90歳としましょう。しかも、ショック状態の最重症の病状です。御高齢ではありますが、倒れる前までは、割と元気な方だったようです。

 

急性心筋梗塞とは、心臓の血管(冠動脈)が閉塞し、心臓が壊死する病気です。発症直後の死亡率が高い病気であり、ショック状態ですと尚更で、死の直前といった感じです。急性期の治療が大変重要です。最善の治療は、閉塞した血管を再灌流(カテーテル治療)させてあげることです。

 

超高齢者ですが、我々は、その最善の治療である「カテーテル治療」を行うわけです。救命を図ります。ショック状態という最重症であり、補助循環、人工呼吸器など、高度な機器も使用します。行わなければ、ほぼ確実に死に至ります。

 

ただし、カテーテル治療を行っても必ずしも救えるわけではありませんし、場合によっては、管だらけ、機械だらけになって、意識もなく、寝たきりで、長々と入院生活を送ることになることもあります。かえって辛さや苦しみが増してしまうこともあります。

 

 

ピンピンコロリ

多くの高齢者は、自分の最期として「ピンピンコロリ」を望んでいます。普段の自分の外来に通院している御高齢の方々は皆そう言います。

 

 

超高齢者の瀕死の急性心筋梗塞患者の救命を試みることが、「本人が望んでいたピンピンコロリの絶好のチャンスを奪っている」ことになるのかもしれない、と感じます。

こんな場面で、高度医療で救命を試みることが、本当に患者本人にとって、家族にとって、医療提供側にとって、日本にとって、本当に幸せなことなのか、わかりません。

実は、余計な?治療をせずに、「ピンピンコロリ」にしてあげた方が、御本人の希望通りなのではないか。

そんな思いが、頭の片隅によぎりながらも、やっぱり懸命に、救命治療を行います。

 

 

一方で生じる機会損失

そんな超高齢者の治療中に、更に救急隊から急患の連絡が入ります。50歳の急性心筋梗塞患者の受け入れ要請です。しかし、残念ながら、現在その超高齢患者のカテーテル治療中であり、対応困難。お断りせざるをえません。仕方ないことなのですが、超高齢者の対応で、働き盛りの年代の方の重病の対応ができなくなる現実にも、また複雑な思いを抱いたりします。

 

 

長寿がゴールとは限らない

超高齢者の治療のゴールは、様々です。医療機械だらけにになっても、手術を繰り返しても、何がなんでも、100歳まで、120歳まで生きたいという人もいるでしょう。そんなエネルギッシュな方々には、それに応じたサポートをしたいと思います。無理なく、自然に任せて、、、という人もいます。長生きは別にしなくてもいいけれど、ピンピンコロリと逝きたい、、という人もいます。目の前の延命が、必ずしもその人の目指すことであるとは限りません。

その人の価値観、信念、考え方次第です。元気な時から熟考し、自分の希望を明確にし、これを、家族と、かかりつけ医と、周囲の方とシェアしておく、意思表示しておくことが大変重要と、改めて感じました。皆の幸せのために、何よりも御本人の幸せのために。

 

家族と、ざっくばらんに「死」について語り合うことを目指すイベント。8/30夜開催します。ご興味のある方はご検討ください。

《死を語り合う文化構築✖️レジリエンス》医師が伝える「人生100年 時代の親子の終活~後悔しないためにすべての子世代が今からできること~」vol.2