おはようございます。布施淳です。

 

とある本を読んでいたら、こんな文献に出会いました。

 

Systematic Review: The Relationship between Clinical Experience and Quality of Health Care」(Ann Intern Med. 2005;142:260-273.)

 

医師の経験と、そのパフォーマンスの関係を調べた論文を約60集め、それらを統合した研究(システマティックレビュー)です。パフォーマンスの評価項目としては、60の論文で各々異なり、知識や、診断、治療、患者予後などが含まれます。研究対象者、領域も各論文で様々で、内科医、外科医、家庭医、循環器医、、、、医療一般知識、輸血、HIV、肺がん、高血圧、心筋梗塞、糖尿病、乳がん、マンモグラフィ、結核、、、、。

 

この統合研究の結果の図です。縦軸が研究の数。横軸がその研究の主要評価項目。バーの色が濃いほど、「年長医師になるほど能力が下がる」ということを表すのですが、60の研究のほぼ全てで、そのような傾向を示しています。

 

experience-and-health-care-jama

 

ざっくり結論を言うと、

 

「年長の医師は、経験の少ない若手医師よりも、知識も診断・治療能力も劣る」

「患者にとって、年長の医師にかかることは、質の低いケアを被る”リスク”である」

 

 

年長の医師なら、経験が多いので、きっと優秀なのだろう。と誰もが思いますが、現実的にはそうでないことの方が多いということです。自らの昔の知識・経験に固執したり、新しい技術に挑戦しなかったり、勉強不足であったり、様々な要因があるのでしょう。(もちろん、年長医師の中には素晴らしい知識・技術を持った達人もたくさんいます!)

 

ただ、論文で取り上げている60もの文献は多くが2000年前後のものです。中には1970年代の古い論文も含まれます。1970年代はもちろん、1990年代も、今ほどEBM(根拠に基づいた医療)やガイドラインが発達しておらず、「標準的医療」というよりは「自らの経験に基づいた医療」を実践していた医師が相対的に多かった時代だと思います。したがって、今現在の医療環境に当てはめることができるか否かは議論があるところです。しかしながら、少なくとも、向上心なく、学びの姿勢のない医師は、年長になにつれ、知識・技術が低下していくことは確かと思われます。

 

患者としては、「年長の医師=経験があって優れている」という固定観念は捨てた方が良いでしょう。様々な情報収集とゼロベースの視点で医師を見ることが求められます(難しいですけどね)。

 

医師としては、常に学ぶ姿勢や謙虚な姿勢、前向きな姿勢を忘れてはいけません。

 

いつの間にか若くなくなっている自分にとって、他人事の話ではないと身につまされる思いです。自分を「年長」と思わず、いつまでも「若手」と思って、ガツガツやっている方が良いかもしれません笑。

 

 

この本で、上記文献を見かけました。なかなかインスパイアされる本でした。