おはようございます。布施淳です。

 

当直明け日常業務は日常茶飯事

医師が当直で徹夜で働いて、翌日そのまま通常の日常業務に従事することは日常茶飯事です。当直明けは半日で帰宅できるような施設も増えていますが、そうでない施設も多いです。当直でなくとも、自分の担当患者の病状が悪ければ夜中まで勤務したり、緊急手術が必要な患者がいれば呼び出されたりすることも珍しくありません。

 

寝不足の状態の医師とこんな会話が交わされることは、これまた日常茶飯事です。

「寝不足でしょ。大丈夫?」

「大丈夫です!」

 

睡眠不足が我々に与える影響

こんな事態は、とんでも無いことだということがこの本には1章割いて記載されています。

 

その中で印象的だった論文です。

「The Cumulative Cost of Additional Wakefulness: Dose-Response Effects on Neurobehavioral Functions and Sleep Physiology From Chronic Sleep Restriction and Total Sleep Deprivation」(SLEEP 2003;2:117-126.

 

48人の健康な成人(21-38歳)を対象に連続14日間、睡眠時間を3群(4時間、6時間、8時間)に分けました。また、3日間夜間睡眠を禁止(徹夜)する実験もしました。このような睡眠時間の状態での神経行動を比較検討しています。

結果のグラフの一部です。

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■ 3日連続徹夜

○ 1日4時間睡眠

□ 1日6時間睡眠

♢  1日8時間睡眠

 

左右の図ともに、横軸は睡眠制限を施した日数(1目盛2日)です。

 

睡眠不足で注意力低下

左図の縦軸の「PTV(psychomotor vigilance task )」は注意力散漫になることにより生じるミスの指標です。

4時間睡眠(○)、6時間睡眠(□)も、日数を重ねるごとに注意力が低下していきます。かつ睡眠時間が少なければ少ないほど低下の度合いは悪いです。

3日間連続徹夜(■)のラインを見ると、1日徹夜するたびに顕著に注意力が低下していくことがわかります。4時間睡眠(○)・6時間睡眠(□)と比較するとその差は歴然です。「徹夜」で当直した、当直明けの業務がいかに危険かわかります。

また、4時間睡眠が1週間続いたら、1晩徹夜した状態と同等の注意力低下を来しました。10日間で、2晩徹夜と同等です。日々の慢性的睡眠不足もボディブローのように効いてきて、「睡眠負債」として蓄積し、注意力を低下させていくのです。

 

睡眠不足でも眠気は程々

右図と合わせて解釈すると、事態はもっと深刻です。

右図の縦軸「SSS(Stanford Sleepiness Scale )」は眠気の指標です。

徹夜(■)すると眠気は顕著に増強します。そりゃそうです。誰もが経験していることです笑。

4時間睡眠(○)、6時間睡眠(□)も眠気は増えますが、かなりなだらかな傾斜です。慢性的に睡眠不足が増えていってもあまり強度の眠気には至らないということになります。しかし、左図では注意力が低下していっています。

つまり、「眠くないけれど、注意力は低下」という状態に陥るわけです。

 

「眠くないから大丈夫」は、大丈夫じゃない!

睡眠不足の場合でも、自分では「眠くないから大丈夫!」と思ってしまうケースは大変多いと思います。自分も心当たりあります。しかし、注意力は低下していますから、ミスが起こりやすくなるのです。自覚症状はあてになりません。

当直明け、徹夜明けの業務は、もはや論外です。

意外と医師ら自身もこのようなことを把握している人は多くないと思います。この本は平易で大変読みやすく、睡眠リテラシーを底上げしてくれます。