おはようございます(ハイタッチ笑!)。布施淳です。

前回触れたハッピーマネーの5つの原則の1つに「時間を買う」という項目がありました。忙しくすることは人を幸せにしないし、時間的余裕こそが人生の満足感を向上させるもの、ということを学びました。

その流れで、こんな本が目にとまりました。

 

 

いつもいつも「時間がない」と言っている自分にとっては、興味津々のインパクトのある題名です笑。

しかし読んでみると「時間」に関する本というよりは「欠乏」に関する本でした。原題も「Scarcity: Why Having Too Little Means So Much」でした。

 

「scarcity /skéərsəti/ 名詞 (食料資源などの)不足, 欠乏(状況)(shortage); まれなこと」(大辞林)

 

「欠乏」とは、自分が持っているものが必要と感じるものより少ないことです。必要を満たすだけの資源がないという主観的な感覚です。

 

時間がない(時間の欠乏)、お金がない(金銭の欠乏)、友達がいない(人付き合いの欠乏、社会的絆の欠乏)、、、と、個々の人として「欠乏問題」は身近なものです。社会としても、環境問題、食糧問題、失業問題や、貧困問題、所得格差、教育格差、、、様々な「欠乏問題」があります。「欠乏」は個人に、社会に、深くかかわるものです。

 

例えば、時間がないと、当然、物理的に行うことが制限されます。不満や不自由を感じます。1日30時間くらいあればいいのにと思います。しかし「欠乏」は単なる物理的制約だけではありません。

 

「トンネリング」

「欠乏」は、心を占拠します。

「時間がない、時間がない、、、」という思いが、心を占拠します。目の前の「すべきこと」に集中することで、それ以外こと、「もっと重要かもしれない」ことに注意が向かなくなります。目の前の仕事に没頭することで、友人や家族との付き合いをおろそかにするのです。目の前の仕事に没頭することで、食事をカップラーメンで済ませたり、日課のジョギングをキャンセルしたりするのです。仕事への視野狭窄により、もっと重要であろう「つながり」や「健康」に意識が向かなくなります。これを「トンネリング」と表現しています。複数の作業を同時にこなすマルチタスクは、「トンネリング」の兆候と言います。ああ、自分もめちゃ当てはまります笑。

 

 

「処理能力」低下

「欠乏」はマインドセットでもあり、人の注意に影響を与え、人の考え方も変えます。

「欠乏」は、人を「トンネル」に引き込むことにより、その「処理能力」に負担をかけ、「処理能力」のあらゆる要素を弱めます。洞察力が衰え、前向きな考え方ができなくなり、自己を制御できなくなります。流動性知能も実行制御力も弱めます。外部の騒音が明晰な思考を邪魔するように、「欠乏」は内部からの騒音を生み出し、思考や様々な「処理能力」を障害します。パソコン操作において、バックグラウンドで大きなプログラムを動かしている時に、目の前のネットのブラウザの動作が鈍いのと同じことです。ある研究によると、金銭的に欠乏している状態だと、同じ人でも認知能力が低下します。IQが下がります。

 

貧困者は個人として処理能力が低いのではない。そうではなく、貧困の経験が人の処理能力を奪うのだ”(抜粋)

 

そして、「欠乏」は多くの場合、一時的ではなく、持続的に、人に負担をかけます。他のあらゆる心配事の上に更なる負担をかけ続けます。「処理能力」に常に負担をかけ続けます。「意識」「無意識」関係なく、負担をかけ続けます。ちょっとした笑顔や、親切心、忍耐、寛容、思いやり、献身、、、などにも影響を与えます。

「欠乏」は、失敗できる余裕がないばかりか、失敗する場面が多い、まちがえる場面、誤った選択をする場面を増やす、ということです。そして、時間がないからと仕事の一部を先送りにして、やるべき仕事がどんどん押せ押せになっていく。そうやって人は「欠乏」の悪循環にはまっていくのです。

 

 

 

それでは、「欠乏」の魔の手から逃れるにはどうすればよいのでしょうか?

 

「スラック」

スーツケースに荷造りをしている時、ギチギチに詰めると余裕が持てません。余分なスペースがあると心にもゆとりが持てます。このスペースを「スラック」と表現しています。

 

slack /slæk/名詞1 (ロープなどの)ゆるみ, たるみ; ゆるんだ部分. 2 (お金人時間などの)余分, 余裕, 余剰. 3 (商売の)閑散(), 不況().」(大辞林)

 

「スラック」があれば、スーツケースに詰めるものはAにするかBにするか?というトレードオフから解放されるし、AもBも詰めるという「選択しない自由」を得ることができます。時間に関しても同様です。「スラック」は無駄につながりかねませんが、誤りを吸収し悪影響を最小限にしてくれます。「スラック」があれば失敗ができます。効率をあげることにもつながります。道路は交通量が容量の70%以下でスムースに機能します。それ以上増える、つまり「スラック」がないとちょっとしたブレーキ操作などがきっかけで渋滞が起こるし、ちょっとしたトラブルで交通マヒを来してしまいます。コーヒーミルはコーヒー豆をギュウギュウに詰め過ぎると挽くことができなくなります。

「スラック」は、一見無駄に思われるので切り詰めたくなりがちな「ゆとり」とも言えるのですが、「欠乏」の魔の手から逃れるキーとなる概念です。

 

 

この本では様々な事例を具体的に取り上げ「欠乏」の問題点、影響を、そして「スラック」の重要性を指摘します。「欠乏」は我々にとって身近な問題であり、しかも自分で考えている以上に影響が大きいもののようです。自分の「欠乏」状態を認知し、自分がとっている行動が最善のものか、時々俯瞰的に見直すことが重要かと思いました。考えてみれば当たり前のことかもしれませんが、読み物として結構面白いですし、個人的には「処理能力」の低下にはへーと思いました。