おはようございます。布施淳です。

 

大阪梅田の悲劇

大阪梅田の繁華街で乗用車が暴走し、複数の死傷者が出た事故。

http://www.sankei.com/west/news/160226/wst1602260065-n1.html

お亡くなりになった方々のご冥福をお祈り致します。

 

さて、この事故、報道によると、乗用車の運転手(51歳男性)が突然病気を発症し、意識消失し、運転不能となり、暴走に至ったようです。その病気とは、急性大動脈解離、そしてそれに続発した心タンポナーデです。

 

 

急性大動脈解離とは

急性大動脈解離とは、身体の中心を走る太い血管である大動脈が裂ける病気です。通常、激烈な背部痛や胸痛を伴います。この裂け目が心臓まで至り、心臓の外側の膜に破裂して血液がその心囊腔に漏れ出てしまい、心臓を圧迫してしまうのが、心タンポナーデです。心臓を圧迫してしまうことにより、心臓はポンプ機能を失い、心停止に至ります。発症からあっという間に心停止になってしまうことも珍しくありません。

 

大動脈の裂ける部位や程度によって、様々な病態を呈しますので、診断が難しいことも多々有ります。脳梗塞の症状や、心筋梗塞を併発したり、腹痛、下肢しびれや麻痺、声がかすれる、腰痛、、などなど。そして診断できずに見逃してしまうと、高い確率で死に至ります。怖い病気です。医師にとって絶対に見逃してはいけない病気の一つです。

 

AAD

日本循環器学会 大動脈瘤・大動脈解離診療ガイドラインより

 

 

突然死を引き起こす心タンポナーデ

東京都監察医務院における報告によると、急性大動脈解離の突然死の原因の86%がこの心タンポナーデです。胸痛や背部痛を訴えて救急外来を受診した患者が、救急外来のベッドや、CTなどの検査中に突然の心タンポナーデによる心停止に陥る事例は少なくありません。1分1秒でも早く急性大動脈解離の診断をつけて、治療を施す(まずは降圧!)こと、そして、いつでも心タンポナーデに陥った場合の準備をしておくことが必要です。

心タンポナーデに陥り、心停止にまで悪化してしまうような場合は心囊穿刺(心囊に管を刺し、溜まった血液を抜く)や、心膜切開による血液の排出を、即座に行わなければ確実に死亡します。循環器医や救急医の重要な知識・スキルの1つです。そして、心臓血管外科による緊急手術が唯一の根本的治療です。内科的治療だけでは対応不能です。一旦心停止に陥ってしまうと、病院の中でさえ救命することは結構難しいです。

 

 

自分でできる予防策は血圧管理

急性大動脈解離の発症リスクを下げるためには、まずは血圧管理が重要です。高血圧の人は、急性大動脈解離になりやすいです。自分の血圧を把握しておくことが重要ですので、たまには測定してみましょう。

そういえば、少し前に、スキー中の衝突で小学生が死亡した事故。この女児の死因は、外傷性大動脈解離による心タンポナーデでした。強い衝撃で大動脈が裂けてしまったんですね。スキー場で生じてしまうと、残念ながら救命は難しいでしょう。衝突しないようなスキー場の仕組みづくりが重要ということになります。ご冥福をお祈りいたします。