おはようございます。布施淳です。

心臓領域では、「心筋シンチ」なる検査を行うことがあります。微量の放射線を出す放射性同位元素(RI、ラジオアイソトープ)を注射し、心臓への集積具合を撮影・測定することで心臓の血流や機能を評価する検査です。アイソトープ検査、RI検査、核医学検査等と表現することもあります。

 

国立循環器病研究センター RI検査で何がわかる?

国立国際医療研究センター 放射線核医学科 心筋シンチ

 

心臓以外でも、脳、肺、腎臓、腫瘍、甲状腺、骨など、様々な臓器や病気の検査で放射性同位元素は利用され、また甲状腺や前立腺の治療にも活用されています。

 

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国立循環器病研究センター RI検査で何がわかる? より)

 

さて、その心筋シンチ検査を受けた患者が、検査後10日ほどの時期に、海外に行きました。とある国の空港でのセキュリティーチェックで、アラームが鳴ったそうです。服を脱いでも、どうしても鳴ってしまうそうです。ポータブルのセンサーで身体の部位を詮索すると、心臓付近で反応したとのことでした。最終的には問題なく通過できましたが、別室に連行され、手間がかかったそうです。

 

心筋シンチで使用した放射性同位元素は「タリウム-201」でした。これは心臓への親和性が良いので心筋血流の評価によく使用される核種です。半減期が72時間ほどですので、検査後もしばらく心臓に残留します。害があるほどではないのですが、長めの残留です。今回のケースも、患者の心臓に残留していた放射性同位元素「タリウム-201」を、放射線検知器が感知しアラームが鳴ったものと思われました。

 

空港のセキュリティーチェックは、金属探知器のみかと思っていました。テロ対策などもあり、最近は放射線チェックもしているところが多いのだそうです。恥ずかしながら、知りませんでした。なおかつ、心筋シンチ検査後に、それを感知してアラームが鳴ってしまうことがあることも知りませんでした。「タリウム-201」ですと検査後1か月経過しても感知し得るようです。今回の件は大変勉強になりました。心筋シンチ検査後に海外渡航する可能性のある人には言及しておくことが必要です。

 

心臓の検査に限らず、他の放射性同位元素を利用した検査であっても同様のことが起こりえます。また、公共施設のトイレなどに設置されている煙感知器(紫外線検出式炎センサー)が誤作動する例もあるそうです。排尿すると尿により排出された微量の放射線を検知器が感知してしまうとのことです。敏感なセンサーなんですね。

核医学検査(製品関連)日本メジフィジックス

Triggering radiation alarms after radioiodine treatment  (BMJ 2006; 333: 293–94.)

Radioiodine and flame sensors  (Lancet 370:934, 2007)

 

甲状腺の病気(バセドウ病等)では放射性同位元素(ヨウ素 I-131)を利用したアイソトープ治療を盛んに行なっています。従って、上記のような誤作動がよく経験される、あるいは起こることが予測されますので、日本甲状腺学会では「アイソトープ治療証明書」の雛形を作成しています。これを利用し、患者の無用な混乱が生じないようにしています。心筋シンチ後もこのような証明書を発行してあげたほうが良い場合もありそうです。

 

医師は、自分が行っている検査や治療のことを熟知していることが当然必要です。今回の件に関しては、反省しきりでした。