おはようございます。布施淳です。

昨日の心房細動の話しの続き。→「心房細動で血液サラサラの薬を飲まない場合

心房細動は脳梗塞が起こりやすいため、脳梗塞予防の薬=抗凝固薬を内服することが一般的です。最近は新しい薬が次々と開発、普及してきていますが、昔からある薬といえば「ワルファリン」です。このワルファリンは、患者個人個人によって至適用量が異なったり、併用薬や食事内容が薬効に影響を与えたり、その調整が難しい薬です。調整具合によるのですが、概ね、脳梗塞を70%くらい減少させるというイメージです。一方で、血液サラサラになりますので、出血しやすくなります。脳出血など臨床的に問題となるような出血の副作用が生じる確率が概ね年間1%くらいです。

昨日の、75歳男性、高血圧あり。この患者が心房細動を併発した場合を再度考えてみましょう。この患者がワルファリンを内服した時の脳梗塞を始めとする心房細動によるトラブルを回避できる確率はどのくらいでしょう。昨日のCHADS2スコアから、年間脳梗塞発症率は約4%です。ワルファリンを内服することにより脳梗塞発症率は、4%x0.3=1.2%に減少します。一方で問題となる出血性合併症は年間1%くらいですので、1.2+1=2.2%。年間2.2%の確率で問題が生じます。回避率は年間97.8%です。

1年目:97.8%

2年目:97.8×0.978=95.6%

3年目:97.8×0.978×0.978=93.5%

4年目:97.8×0.978×0.978×0.978=91.5%

5年目:97.8×0.978×0.978×0.978×0.978=89.5%

6年目:97.8×0.978×0.978×0.978×0.978×0.978=87.5%

7年目:97.8×0.978×0.978×0.978×0.978×0.978×0.978=85.6%

8年目:97.8×0.978×0.978×0.978×0.978×0.978×0.978×0.978=83.7%

9年目:97.8×0.978×0.978×0.978×0.978×0.978×0.978×0.978×0.978=81.9%

10年目:97.8×0.978×0.978×0.978×0.978×0.978×0.978×0.978×0.978×0.978=80.0%

11年目:97.8×0.978×0.978×0.978×0.978×0.978×0.978×0.978×0.978×0.978×0.978=78.3%

12年目:97.8×0.978×0.978×0.978×0.978×0.978×0.978×0.978×0.978×0.978×0.978×0.978=76.6%

 

昨日の記事で、ワルファリンを内服せずに、心房細動を放置した場合に12年目の脳梗塞回避率は61.3%でした。ワルファリンを内服した場合76.6-61.3=15.3%、、、このくらいトラブル回避率が高くなるということです。ワルファリンを内服しても全く脳梗塞にならない!というわけではないのですよね。このへんのことも、医師としては誤解のないように患者に情報提供する必要があります。ただ、ワルファリンを内服していると、脳梗塞を発症してもその重症度はやや軽く済む傾向があるというメリットもあります。ちなみに、新規抗凝固薬は、脳梗塞回避率はワルファリンと大差ありません。脳出血などの出血性のトラブルは半減します。

このへんの情報は山下武志先生の本に、とても平易にわかりやすく書かれています。