おはようございます。布施淳です。

「心房細動」という不整脈。非常に頻度の高い不整脈であり、このブログでも何度か触れてきました。例えば、

心房細動予防に地中海食・オリーブオイル

節酒で心房細動予防!

 

AF1407

 

心房細動の問題点は、心臓の中に血栓をつくり、それが元となり脳梗塞になり易い、ということです。したがって、我々医師が心房細動患者を診る時は、必ず「脳梗塞になりやすいですよ」という旨のことをお話しします。具体的なイメージを抱いてもらうことが効果的だと思いますので、自分は、巨人の長島元監督や、サッカーのオシム元監督などは心房細動から脳梗塞になった人の話しを例示します。

 

患者の反応は様々で、「それは怖い」「困る」「なんとかしたい」という人もいれば、「どのくらいの確率で脳梗塞になってしまうのか?」と更なるツッコミを見せる患者もいます。

 

それでは、一体、どのくらいなりやすいのでしょうか。心房細動が脳梗塞になりやすいのは知っているけれど、どのくらいの確率でなるのかはよく分からない、という医師も少なくないように思います。何割の人が、どのくらいの時期に、脳梗塞になるのでしょう?

 

どのような人が心房細動から脳梗塞になりやすいのか大凡傾向があります(一般的な「非弁膜症性心房細動」の話です)。

 

C:心不全になったことがある人

H:高血圧の人

A:75歳以上の人

D:糖尿病の人

S:脳梗塞になったことがある人

 

CHADS2スコアと言いますが、該当する項目が多い人ほど、心房細動を発症した時に脳梗塞になる確率が上がります。該当する項目数の2倍の数値が大凡の年間脳梗塞発症率になります。ただし、Sのみ2点換算です。例えば、76歳、高血圧の人が、心房細動になった場合は、2点ですので、年間約4%の脳梗塞発症率になります。75歳、高血圧、糖尿病、脳梗塞既往のある方は、1+1+1+2=5点ですので、年間約10%の脳梗塞発症率になります。ちなみに、0点なら脳梗塞予防の薬(抗凝固薬)は飲まないで良いです。1点以上から抗凝固薬内服を考慮していくことになります。

 

75歳男性、高血圧の例をもう少し詳しく見てみましょう。年間約4%の脳梗塞発症率です。治療せず、ほったらかしにしても、脳梗塞にならずに済む確率は、

 

1年目:96%

2年目:96×0.96=92.2%

3年目:96×0.96×0.96=88.5%

4年目:96×0.96×0.96×0.96=84.9%

5年目:96×0.96×0.96×0.96×0.96=81.5%

6年目:96×0.96×0.96×0.96×0.96×0.96=78.3%

7年目:96×0.96×0.96×0.96×0.96×0.96×0.96=75.1%

8年目:96×0.96×0.96×0.96×0.96×0.96×0.96×0.96=72.1%

9年目:96×0.96×0.96×0.96×0.96×0.96×0.96×0.96×0.96=69.3%

10年目:96×0.96×0.96×0.96×0.96×0.96×0.96×0.96×0.96×0.96=66.5%

11年目:96×0.96×0.96×0.96×0.96×0.96×0.96×0.96×0.96×0.96×0.96=63.8%

12年目:96×0.96×0.96×0.96×0.96×0.96×0.96×0.96×0.96×0.96×0.96×0.96=61.3%

 

75歳男性の平均余命は、約12年です。ポイントは、この寿命を全うするまでに、脳梗塞にならずに逃げ切れるか!?ということです。単純に考えると、6割以上の人が罹患せずに済むことになります。この6割という数値を許容できるのか、出来ないのか、個人個人で捉え方が異なるでしょう。低い!怖い!イチローの打率より遥かに高い!大丈夫でしょ!。。。。。

85歳男性、高血圧であれば、平均余命は約6年。上記の6年目の脳梗塞回避率は78.3%。約8割の人が、脳梗塞予防をせずとも脳梗塞にならずに済むということになります。この8割という数値を許容できるのか、出来ないのか、個人個人で捉え方が異なるでしょう。

 

大まかでも良いので、なるべく具体的数値を提示すると患者もイメージがつきやすいかと思います。その上で、納得した治療方針を立てていきます。ただ、個人個人に対する考え方と、社会全体を捉えた考え方で、その解釈や対応は変わってきます。個々の患者であれば、この6割とか8割の確率にかけて、脳梗塞予防を施さない(俗に言う血液サラサラの薬=抗凝固薬を内服しない)という方針は有力な選択肢となり得ます。一方で、マスとして、社会全体を考えると、予防を施さないことによる脳梗塞発症者は増加しますから社会としての負荷が増加します。ので、医師としては、やっぱり抗凝固薬をお勧めすることになるのです。