こんにちは。布施淳です。

医師の仕事は専門性が高く、医師と患者間には圧倒的な知識差があります。従って、患者は医師の優劣を判断することは難しいです。たとえば医療知識・技術が優秀なA医師と、劣っているB医師。そして患者C。それらの医療知識を比較すると、

 

(A-B)<<<<<<<<<(A-C)

(A-B)<<<<<<<<(B-C)

Cにとっては、A≒B に見えます。AとBの優劣を見分けることは難しいです。

 

 

外科医の手術のように、結果がわかりやすい場合は、素人にとって、まだ比較しやすいかもしれません。しかし、結果がわかりにくい、内科系は判断が難しいです。上の式、Aが教授、Bが研修医でも、成り立つと思います。

さらに、例えば、内科の開業医で対処できる軽症患者の対応において、開業医間の医療知識・技術の優劣の判断は、素人にはほぼ不可能と思います。対応する患者の多くは、感冒など自然に治ったり軽減したりする病態が多いので、その場合、医師の介入の良し悪しは良く分かりません。医療の質で、アウトカムが変わることは少ないのです。無免許の人間が医師になりすまして診療していた、という事件が時々あります。多くの病気が、自然治癒したり軽減したりすることを反映した事件と思います。

 

患者が診療所を選択する場合、多くの人は、その医師が優秀なのか否か、分かりません。患者は医師の医療知識の豊富さや、医療技術の高さで選択するわけではありません。選択基準は何になるかというと、恐らくその医師の「人間性」とか、「コミュニケーション能力」なのだと思います。それに加え、経営力の高い開業医なら、立地やホスピタリティーなどでアクセスしやすくまたリピーターを確保できる環境づくりをしたり、人を惹きつける宣伝をしたりするのでしょう。「診療」という本質も重要ですが、むしろそれ以外の影響の方が大きいという解釈もできます。

 

従って、医師が開業する場合に、必ずしも医学的に優秀な医師が成功するとは限りません。勤務医の頃は医師として劣等生だったけれど、開業したらその診療所がとても流行った、という話も全然珍しくありません。

 

時々耳にする、「あの先生、とっても優秀なのよ」といった、ある医師に対して、患者が感じることも、単なる思い込みに過ぎません。Aと Bの差は分からないのですから、この言葉は、A-CやB-Cが大きいことの反映でしかありません。「B先生、とっても優秀なのよ」という言葉も普通に耳にする言葉なのです。

 

医師患者間の知識格差により、悪徳医師が患者を騙すことも容易です。患者は、騙されたこと、騙されていることにも気づかない場合も少なくないでしょう。医師の倫理感を信頼するしかありません。悪徳でない医師でも、「騙す」まではいかなくとも、「適当に言い繕う」場合はあります。医師の倫理感、重要です。