おはようございます。布施淳です。

インターネットを中心とした「情報社会」です。今の世の中、情報が溢れかえっています。どうでも良い情報、似非情報なども多く、それらは「ノイズ」です。本当に自分に必要な情報は「シグナル」。膨大な不要な「ノイズ」の山の中に、本当に必要な「シグナル」が埋もれています。インターネット時代以前は情報不足に悩まされることが多かったわけですが、インターネット時代後の情報過多は新たな悩みを生んでいるということです。

 

昨日は終日外来業務でした。予約患者の再診が中心でしたので、落ち着いた患者が多いです。例えば、以前心筋梗塞を起こしたけれど、今は落ち着いていおり、再発予防の薬を内服している、、、といった患者です。それに近いような方を数十人対応するわけです。患者の元気そうな笑顔を確認して、同じ処方を出すだけとか。正直なところ、医師がいちいち対応しなくても良い患者も多いです。循環器内科外来は特にそのような傾向が強いかもしれません。落ち着いている患者は、自宅至近の診療所に紹介し、そこで管理してもらうことも多いです。病院でも、診療所でも、何れにしても、同じような患者とのやり取りに、医師は時間を忙殺されていることになります。確かに「先生の顔を見るだけで安心します」「先生に会うことが月一回の楽しみです」といった言葉を投げかけてくれる患者もいます。人の役に立っている感覚に陥ります。患者にとってその医師は「希少性」があるのかもしれませんし、ありがたいことではありますが、その本質は患者の「思い込み」と自分では考えています。真の「希少性」ではありません。これらの業務は、看護師や診療看護師でもこなせるでしょうし、自己管理の元、自分で薬局で(風邪薬を買うように)薬を買うようなシステムにしても代わりになるような程度のことも少なくありません。医師の業務としては、このような患者対応業務は「ノイズ」です。

もちろん、一見落ち着いている患者でも、微妙な処方調整を必要としたりする患者もいます。そして、中には、重大な病状悪化が潜んでいる患者もいます。医師としての観察力と専門的な知識と経験を生かした対応力を要します。この対応力が発揮できる場面は、医師としての業務の「シグナル」となります。このような患者を見逃さないために医師が対応しているわけですが、効率は極めて悪いです。

 

再診外来ではなく、初診外来や、救急外来は、「不安定」な患者の割合が多いので医師の関与がより重要になってきます。しかしこれらにおいても、ごくごく軽症の患者が多く含まれます。病院に来なくても良いような方も大勢、病院に押し寄せます。このような患者の対応も、医師の業務としては「ノイズ」になります。仕方ない面も多いですが、医師は「ノイズ」に悩まされます。

 

通常、病院より診療所の方が、軽症の患者が多いです。例えば、風邪に対する風邪薬はほぼ気休めですから処方する必要性は低いのです。でも患者は風邪をひいたら診療所を受診し、医師は風邪薬を処方します。医師の業務としては「ノイズ」です。患者は、薬局に行って、風邪薬を購入すれば良いだけの話です。健康診断で引っかかった、心臓血管病もなく無症状の高コレステロール血症の女性。薬物治療を開始し外来通院してもらう。これも医師の業務としては「ノイズ」です。なぜなら、ほとんど臨床的効果が期待できないからです。80代の軽症糖尿病患者に薬物治療を施す、これもほぼ「ノイズ」です。

 

「ノイズ」の業務が多いのは、外来業務だけではありません。検査前確率が低い(病気がある確率が低い)患者に対する心臓カテーテル検査を頼まれることが少なくないですが、これも医師の業務として「ノイズ」です。効果がないか、ごく少ないような心臓カテーテル治療を行うこともあります。医学的には”一応”適切と考えられてはいる場合に限り行うわけですが、このような業務も「ノイズ」と考えられます。

同じような論点の話を、以前は、「誇り」という切り口で同様の話をしました。

 

自分は「誇り」を持って仕事をしているのか?

 

 

PCのメールには、毎日膨大な数のメールが着信します。その多くが必要性の乏しいものだったりしますが、中には本当に必要な少数のメールがあります。医師としての日々の業務もこのような感じに似ています。毎日の一つ一つの仕事を「ノイズ」か?「シグナル」か?と考えていると、膨大な「ノイズ」に時間を忙殺されていることに気づくのです。軽症患者や安定している患者を軽んじているわけではありません。本当に必要な患者や場面に、限りある医師としての専門的知識スキルを効率良く発揮する環境を構築していくことが、国民の安心・安全に重要なことなのではないかと思うわけです。医師の自覚も必要ですし、国民全体としての「健康リテラシー」向上が必要です。信頼ある健康情報への容易なアクセス、非医師の相談窓口なども良き対策のひとつになるでしょう。