おはようございます。布施淳です。

昨日に続いて、力士の健康についての話。「力士が短命」という趣旨のこんな論文も見つけました(Hoshi A, Nippon Eiseigaku Zasshi 1995;50:730–6.)。1898年 か ら 1991年 までに幕内 に入幕 した全力士664名 を対象にした観察研究です。やはり肥満の程度(BMI)が死亡率に寄与する因子として挙げられています。全文ネットで読めます。

 

日本相撲協会のツイッターでは、力士の健康診断中の写真が公開されていたそうです。http://togetter.com/li/777645 まあ、普通の心電図、採血、血圧測定、な感じです。

 

 

検診で異常を認めた力士、例えば、心電図異常を呈した力士はどのような検査に進めばよいのでしょうか。

 

心臓超音波検査は簡単に施行可能です。但し、超肥満ゆえに、超音波による心臓描出は不十分である場合は少なくないでしょう。

虚血性心疾患が疑われる場合は、通常、心臓に負荷をかける検査が行われます。負荷心電図、負荷心筋シンチ(核医学検査)、負荷心臓超音波などが想起されます。負荷は通常「運動負荷」です。

運動負荷心電図は勿論可能ですが、検査の精度としては多少落ちるのと、150kgの巨人がトレッドミルというベルトコンベアの機器の上をどすどす走るとなると、機器の耐久性が問題になるかもしれません。

負荷心臓超音波も可能でしょうが、やはり画質が心配ですし、日本での普及率は低いので検査する人の技術の質もきになるところです。

負荷心筋シンチ、場合によっては、負荷MRIもありえますが、これらは比較的狭い機器内に入ることが必要です。入らない力士もいるかもしれません。また、肥満ですと、やはり画像的に描出不良になる可能性もあります。

負荷検査以外の選択肢として、冠動脈CTという選択肢もあります。こちらに関しても機器に入らない力士はいるかもしれませんが、欧米では超肥満は少なくないでしょうから、対応できる機器はきっとあるでしょう。ただ、放射線被曝しますので、気軽に頻回に施行できるかというと、そうでもありません。

参考(心臓に関する検査):http://www.ncvc.go.jp/cvdinfo/pamphlet/heart/pamph29.html

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ということで、力士(と元力士)の心臓を検査する、、、と一言で言っても、実際の医療現場としては結構難しい面がありそうです。肥満診療の経験の豊富な欧米の医療機関にノウハウを聞くと良いのかもしれません。。。

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慶應義塾大学スポーツ医学研究センター ニュースレターで、力士関連の記事を見かけました。

http://sports.hc.keio.ac.jp/_userdata/Newsletter16.pdf

相撲協会に委託され、体脂肪測定装置を利用して、力士の体脂肪率を測定したという記事です。幕内力士 25 名の平均身長は 186.3cm、平均体重 161.2kg、平 均体脂肪率 32.5%、平均体脂肪量 52.9kg、平均徐脂肪体重は 108.3kg でした。やっぱり唯の肥満ではないようですが、でも脂肪量も多いです苦笑。このようなデータがどのような形で力士の健康管理に利用されているのかは不明です。

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また、pubmedを検索してみると、”Sumo wrestler” 関連の論文も少しはhitします。例えば、エコーを利用して力士の身体密度を算出する論文とか。

Br J Sports Med 2003;37:144–148

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40年前の論文(Am J Clin Nutr. 1976 Oct;29(10):1167-74.)では、「力士の肥満や脂質代謝異常(コレステロール)、尿酸代謝異常(痛風)は、主にカロリーの過剰摂取や、一部、頻回な食事摂取に起因する」と結論されています。先述の論文(Hoshi A, Nippon Eiseigaku Zasshi 1995;50:730–6.)では力士の死亡率は経時的に改善傾向が示唆されているようにも解釈できますが、追跡が不十分な面もあり、明確ではありません。少なくとも、BMI値に反映される肥満の程度は40年間あまり改善されていないように思います。

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結局、こういうことでしょうか。

・力士の肥満度を抑制することは競技の性質上難しい

・40年間、肥満の程度は顕著な改善はなさそう

・よって、今なお力士は高血圧や糖尿病、動脈硬化に罹患し易い

・超肥満の心臓の検査は容易ではなさそう

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引退後の力士は、現役時代ほどでないにせよ、肥満傾向が継続している人も少なくありません。次善策として、現役時代は肥満で仕方ないとしても、引退後に戻すのはどうでしょう。(若貴兄弟の)貴乃花は、引退後に減量してスリムになりました。ずっと肥満体型のまま中年まで過ごすよりは良いのではないでしょうか。貴乃花の減量のプロセスはよく知りませんが、日本相撲協会として引退後の力士の減量に対し、組織的に支援していくシステムがあれば良いのではないかと思いました。アウトソーシングしてもいいし。相撲協会とライザップの業務提携とか笑。