おはようございます。布施淳です。

俳優の阿藤快さんが急逝しました。死因は、大動脈瘤破裂、胸腔内出血とのこと。ご冥福をお祈りいたします。

http://news.livedoor.com/article/detail/10844666/

 

「大動脈瘤」と言ってもいくつか種類がありますが、ざっくり言うと、大動脈が拡張して、膨らんで、ついには破裂してしまう病気です。正常の大動脈は約30mmくらいの太さです。1.5倍を超えると「大動脈瘤」と言い、これが50mmくらいまで拡張してくると破裂のリスクが増大します。瘤径が小さい時は自覚症状がありませんので、発見されずに進行してしまうことが少なくありません。健康診断等で胸部レントゲン写真で気づかれることがあります。一旦発見されたら、CTスキャンなどで検査しつつ経過観察し、拡大してきたら手術のタイミングを図るというのが、スタンダードな治療方針です。

 

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(大動脈瘤・大動脈解離診療ガイドライン より)

 

胸部大動脈瘤が拡大すると症状が出る場合があります。周囲の臓器を圧迫することにより嗄声(声が枯れる)、嚥下障害(飲み込みずらくなる)、顔がむくむ、などが挙げられます。そして、破裂し掛かかると疼痛を感じます。もちろん、破裂してしまうと激痛であることが一般的です。胸部の大動脈瘤が一旦破裂してしまうと、死亡率は90%と高く、手術室にたどり着いても、死亡率は50-70%ほどと言われています。怖い病気です。

欧米の疫学調査では、女性が男性より3倍動脈瘤破裂の頻度が高く、また、高血圧、喫煙が破裂を助長します。特に、喫煙は6.5倍も破裂による死亡リスクが上昇します。ウィキペディアによると、阿藤さんは、2014年に禁煙しましたが、それまでは2-3箱/日のヘビースモーカーだったそうです。

参考:大動脈瘤・大動脈解離診療ガイドライン(日本循環器学会)

 

報道によると、阿藤さんは「ここ2カ月ほどは周囲に「背中が痛い」と語っており」「死の1週間前にはマッサージを受けるなどしていた」とのこと。胸部大動脈瘤が2か月前から拡大し、破裂寸前であったのかもしれません。

 

救急外来などでの急患対応の際、「背部痛」は、対応する医師にとっては最も気を付けなければいけない症状の一つです。なぜなら、この致死的疾患である大動脈瘤が原因の1つとして挙げられるからです。大動脈瘤を見逃してしまうと患者は死に至る確率が極めて高いからです。従って、「背部痛」と聞けば、何らかの方法でこの「大動脈瘤」の有無をチェックすることになります。

 

阿藤さんが、「背部痛」のことを医師に少しでも相談していれば、展開は違ったかもしれません。自ら病院に受診しないまでも、気軽に相談できる医師が知り合いや友人にいて、かつ、電話やメールででもちょっと相談してくれていれば、強く病院受診を促すなどの進言があったかもしれません。

 

今までにない背部痛、激しい背部痛を自覚したら病院受診する。これが「戦略」です。一旦病院を受診してしまえば、その後の細かい治療方針は「戦術」であり、それらの間には大差ありません。「戦略」を誤ってしまうと、大きく道を外れてしまうことがあるということです。

 

以前、どこかの本で読んだ言葉。友人を3人持つなら、①病気の専門家「医師」、②法律の専門家「弁護士」、③お金の専門家「フィナンシャルプランナー」、だそうです。この意見については議論があるところでしょうが、今回の阿藤さんの件は、①は大事、、と感じました。