おはようございます。布施淳です。

アメリカのサッカー協会(USSF)が小児のヘディングを禁止(<10歳)、制限(11-13歳)するそうです。ヘディングによる脳へのダメージはこれまでも議論されてきたようですが、具体的な対策が施されるのは初めてのようです。

http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/169448

http://matome.naver.jp/odai/2144721875408046301

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23757503

 

succor ball

 

ちょうど、慈恵医大脳神経外科名誉教授の阿部俊昭先生の脳震盪に関する話を拝聴する機会があり、頭部外傷、脳震盪に関し思いを新たにしました。

 

頭部外傷が生じるときに重要な要素は、「衝撃の強さ」と「加速度」だそうです。必ずしも強い衝撃でなくとも、加速度が加わることにより脳が揺さぶられ、障害されるわけです。頭に直接の衝撃がないにもかかわらず、脳に障害が及ぶ「揺さぶられっ子症候群」も加速度が原因と言えるでしょう。

 

直接の衝撃に対し防御するためには、例えばバイクのヘルメット、アメフトのヘッドギア、ラグビーのヘッドキャップなどが役立ちます。しかし、それらは加速度による悪影響に対してはあまり役立ちません。

 

ヘディングにおいても、サッカーボール自体はそれほど硬いものではありませんので、直接の衝撃というよりは、むしろ問題となるのは加速度でしょう。従って、ヘッドギアといった物を使っても効果的な予防策とはなりません。現時点では、脳への悪影響を効果的に軽減する方策は乏しく、ヘディングの機会を減らすしかありません。

 

脳への障害は「スペクトラム」「連続帯」だそうです。

びまん性軸索損傷」という恐ろしい脳の障害があります。強い加速度が加わることにより脳の「軸索」という電線のような組織が断線し、重篤な脳損傷をきたします。意識障害、昏睡、寝たきり、、、といった重い後遺症を残します。救命センターに搬送されてくるバイク事故などの交通外傷患者。脳のCTでは著しい脳出血やを脳挫傷を認めないにもかかわらず意識障害が残存する、、、という場面を時々目にします。「びまん性軸索損傷」の典型的パターンです。

ラグビーといったスポーツ中などに頭部を打撲し、生じる「脳震盪」。これは軽症の「びまん性軸索損傷」だそうです。同じ病態ですが、程度が軽いだけなのです。そう考えると、かなり怖い!「びまん性軸索損傷」が、脳の”電線が断線”したとすると、「脳震盪」は”一時的な停電”だそうです。もしかしたら、”電線の部分断線”かもしれません。

 

そして、脳へのダメージは、蓄積します。脳震盪を繰り返すことにより慢性脳損傷(ボクシングのパンチドランカーのイメージ)や、Second impact syndoromeという致死的病態に陥り、強い脳浮腫によって命を落とすこともあるそうです。脳震盪による”電線の部分断線”を繰り返し、完全に断線してしまうイメージでしょう。

 

サッカーのヘディングも、脳への障害の「スペクトラム」のごく初期段階と考えられます。軽度かもしれませんが、その軽度の衝撃・加速度を頻回に繰り返すことにより、長年にわたりダメージが蓄積し、脳の電線に障害が及ぶ可能性は、容易に想像できます。そのような可能性がある限り、少しでも回避しておきたくなります、特に未来ある少年少女ですと。

 

【脳障害のスペクトラム】

 

「脳への衝撃・加速度」 (ヘディングなど)

   ↓

「脳震盪」

   ↓

「びまん性軸索損傷」

 

 

阿部俊昭先生のお話を聞きつつ、USSFの判断は妥当だろう、と思いました。

 

そういえば、以前にも脳震盪の話は出ましたね。

「脳震盪とラグビーとフィギュア羽生結弦君と認知症」

http://junfuse.com/141111concussion/