おはようございます。布施淳です。

歯科の処置と言えば、歯や歯垢をドリルのような器具で削る「キュイーン」という音を思い出します。思い出すだけで鳥肌が立ちます。かなり嫌いです笑。

あの器具、「エアタービン」という名称だそうです。「高速切削用の回転切削機。歯質の切削や修復物の研磨を行う」とのこと。

歯科用語の解説 http://www.oralstudio.net/stepup/jisho/sakuin/E382A8/04338_08.php

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(株式会社ナカニシNSK  HP http://www.japan.nsk-dental.com/ より)

 

カテ室工事

 

さて、自分の勤務する病院は、現在、心臓カテーテル室の増設工事中です。心臓カテーテル室(カテ室)とは、カテーテルという細い管を使用して、心臓の病気の検査や治療を行う部屋です。狭心症や心筋梗塞、不整脈などの検査・治療が行われます。

現在のカテ室1の隣に新しいカテ室2を造っており、現在のカテ室1で、検査治療を行っていると、カテ室2の工事の音が結構響いてきます。

「ギュイーン」というドリルが作動する音もよく聞こえてきます。

このドリル音、心臓カテーテル室においては、意外と違和感がありません。

 

なぜかと言うと、心臓の治療でも「ドリル」を使うことが時々あるからです。

心臓の血管「冠動脈」に動脈硬化が生じ、それが進行していくと「石灰化」という現象が起こることがあります。文字通り「石灰」ですから、血管の壁が硬く、ガリガリ、ゴリゴリの状態になってしまうのです。

通常、動脈硬化で狭窄を来した冠動脈を治療するにはバルーンやステントといった治療器具で事足ります。

 

しかし、強い石灰化を伴った動脈硬化の狭窄ですと、バルーンやステントだけでは綺麗に広がらないのです。

そこで登場するのが、冠動脈用のドリル「ロータブレーター」という治療器具です。

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Boston Scientific HPより)

 

先端に細かなダイアモンドが装着されたドリルが高速回転することで硬い石灰を砕くのです。これにより、血管が通過するようになったり、バルーンやステントにより血管を広げやすくなったりします。

歯科の治療器具「エアタービン」同様、”高速切削用の回転切削機”という感じです。エアタービンは回転数450,000 – 500,000rpmだそうですが、ロータブレーターは200,000rpmくらいです。

【参考】倉敷中央病院心臓病センター

http://www.kchnet.or.jp/hdc/cardiovascular/disease/treat/PCI/rota.html

このロータブレーターを使うと、「ギュイーン」という音がするのです。カテ室工事の音と似ています笑。心臓の中でドリルが回るなんで、考えてみたらかなり物騒です苦笑。患者さんも、気が気ではないでしょうね。「ドリル」だけに、危険性もありますので、使用にあたり熟練した技術が必要ですし、使用できる施設が限定されています(施設基準が設けられています)。

使用頻度は高くありませんが、血管が石灰化で硬くなってしまった患者の治療には欠かせない治療器具です。

 

こんな物騒な治療器具のお世話にならないように、血管の石灰化予防をしたいですね。まずは、日頃から食事や運動といった生活習慣の是正、血圧管理を心がけましょう。

そういえば、最近、「Heart」という医学雑誌に「コーヒーを1日3-5杯飲む人は冠動脈の石灰化が少ない」という結論の論文が出ていました。韓国からの論文ですから、日本人にも当てはまるかもしれません。コーヒーを飲むのも、1つの選択肢のようです。

 

Coffee consumption and coronary artery calcium in young and middle-aged asymptomatic adults
Heart doi:10.1136/heartjnl-2014-306663
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