おはようございます。布施淳です。

「運動すると、死亡リスク、心臓血管病のリスクが低下する」という論文について、以前お話ししました。

 

「のんびりジョギング」5分間でも健康増進 http://junfuse.com/140731leisure-time-running/

運動は「奇跡の薬」http://junfuse.com/140901miracle/

 

しかし、ランニングが長すぎたり、速すぎたりすると、逆に死亡リスクが上昇する可能性がある、という「Uカーブ現象」の話にも触れました。

 

運動の目的を明確にしよう http://junfuse.com/140923objectivesof-run/

 

さて、新たにこんな論文を見かけました。

Frequent Physical Activity May Not Reduce Vascular Disease Risk as Much as Moderate Activity Large Prospective Study of Women in the United Kingdom

Circulation. 2015;131:721-729

 

イギリスの前向きコホート観察研究です。50歳から64歳までの130万人の女性が登録されているコホートで、除外基準(癌患者、心臓血管病、糖尿病等)の方を除いた、約100万人に身体活動や運動習慣をアンケート調査し、平均9年間追跡しています。

結論としては、運動や身体活動の高い人は、概ね心臓血管病になるリスクが低い傾向にありました。

 

この論文の注目すべき点の1つは、「心臓血管病」を若干細かく解析しているところです。

冠動脈疾患、脳出血、くも膜下出血、脳梗塞、肺塞栓、下肢静脈血栓症、全ての病態で同様の傾向がありました。

 

そして、この論文でも、

強めの運動(汗をかく、心拍が上昇する)を毎日行う人は、週2-3回、もしくは週4-6回行う人よりも、心臓血管病リスクが高い傾向にありました。

いわゆる「Uカーブ現象」がこの論文でも認められました。

Uカーブ現象

観察研究ですから、調整しきれないバイアスが潜んでいる可能性もありますが、観察研究なりにこの論文は質が高いと著者たちは主張しています。前向き研究であること、かなり大規模であること、フォローアップがほぼ完璧であること、病気の診断の信頼性が高いこと、初めの4年間のイベントは除外しており因果関係のバイアスを除去していること、などを挙げています。

これまでも、過度の運動は、むしろ死亡率をあげるという同様の傾向を認めた論文は複数あります。過度の運動で、心臓の障害が生じたり、不整脈が生じたりして、運動中の突然死をきたしうるということは医学的に理解しやすい現象ですが、心臓病の罹患や、脳血管疾患の罹患、そして、静脈血栓症の罹患が促されるという機序は、よくわかりません。

 

「運動や身体活動が健康に良い」ことは明らかです。紛れもなく、運動は「奇跡の薬」です。

しかし、「健康促進」を目的に運動をするのであれば、激しい運動を避けたり、毎日ではなく休養日を設けるほうが無難という感じです。