おはようございます!挨拶は先制攻撃!布施淳です。

心臓病は、「突然死」を起こすことが少なくありません。普通に街中を歩いていた人が胸痛を訴え、突然心臓が止まってしまうことがあります。その際、救命に必要なことは、周囲の市民による心肺蘇生術です。いわゆる「心臓マッサージ」(正確には「胸骨圧迫」)、AED(自動体外式除細動器)です。

自分は心臓病を扱う仕事柄、心肺蘇生術の講習会を開催することが多いです。

http://itc.j-circ.or.jp/

下図は、総務省消防庁から発表されたデータです。

http://www.fdma.go.jp/neuter/topics/fieldList9_3.html

「心臓が原因の心停止」(突然の心停止)が一般市民により目撃された場合の、1ヶ月後の生存率及び社会復帰率を性別、年齢区分別のグラフとして表しています。クリックすると拡大します。

市民目撃CPAの1ヶ月生存率

 

若年者ほど救命率は高く、高齢になるにつれ、救命率は低くなります。本当に意味のある数値は「生存率」より「社会復帰率」です。なぜなら、「生存率」の中には、救命はできたけれど、意識が回復せず、寝たきり、、、という人も含まれているからです。

 

救急救命センターに搬送されてくる「院外心肺停止」患者は、高齢者が多いです。80代、90代といった平均寿命を超えた方も搬送されてきます。

心肺機能停止傷病者全搬送人員のうち年齢別件数

「救急車(救命士)」→「救命センター」ですから、「救命」を試みるのが任務です。救命士や救命医が望む、望まざるに関わらず、そんな高齢者にも心肺蘇生術を行うわけです。しかも、より高度な「二次心肺蘇生術」という薬や各種器具・機器を使用した対応を施します。

でも上のグラフで「1ヶ月後の社会復帰率」を見ると、高齢者、例えば70代では約5%、80代では約2.5%、90代では約1%です。極めて低率です。多くの医療従事者の労力を投資している割には、それに見合わない数値と思います。

仮に運良く社会復帰したとしても、その後の人生も残り僅かです。投資した労力・税金とのバランスに欠いていると思わざるを得ません。

また、ピンピンコロリ(PPK)の観点からすると、高齢者の心臓突然死は、PPKの絶好のチャンスなわけです。心肺蘇生術により、中途半端な回復を示し、PPKのチャンスを逃して、結果、寝たきりでその後の人生を過ごす、、、という望まざるシナリオに移行してしまうリスクもあります。

(参考)ピンピンコロリ

http://ikiiki-laboratory.com/ppk/index.html

ピンピンコロリの法則 改訂版 -「おでかけ好き」は長寿の秘訣- (ワニブックスPLUS新書)

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命が尊い、という視点は忘れてはいけませんし、高齢でも生存欲の極めて強い方もいらっしゃいます。高齢者とはいえ、試みるべき心肺蘇生術もあるでしょう。一方で、本人が望んでいない心肺蘇生術が行われてしまうこともしばしばです。

現場の救命士や救急医も、救命率は低いだろうと思いながらも、やむなく心肺蘇生術を施行していることが少なくありません。このような辛い面のある仕事です。

高齢者への心肺蘇生術には、多様な問題が潜んでいます。

 

最も重要なことは、各人が、高齢になったら(なる前から)、

「自分がどのような死を迎えたいか?」

「心肺蘇生術などの延命処置を施してもらいたいか?」

を、自分自身、そして家族と共に、よく考え、そして出た結論を明確に意思表示しておくことと思います。これにより、無駄な心肺蘇生術や無駄な医療が回避され、高齢者本人も、家族も、医療従事者も、国民も、みんなにとって良きことにつながると思います。

 

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「会えるのは今日が最期」の意識

http://junfuse.com/141204lastday/