おはようございます。あいさつは先制攻撃。布施淳@当直明けです。
またしつこく、心筋梗塞や狭心症といった虚血性心疾患の治療の話です笑。
ここ数日の話題と重複している部分もあります。
硬い内容になっちゃったかな笑。
ご了承くださいませ。
身体に負担の少ない心臓カテーテル治療(PCI)は、器具や技術が日進月歩です。
かつては冠動脈バイパス手術(CABG)を行っていたような重症病変も、PCIで対処できることが多くなってきました。胸を切らずに済みます。患者にも好評です。
しかし、その場でPCIが成功しても、虚血性心疾患はそれで解決するわけではありません。病気の本態である「動脈硬化」は年々進展していくため、病気の程度も進行する動的疾患です。スペクトラムです。一生の付き合いが必要です。
動脈硬化
重症病変に対するPCIは、CABGにかなわない、というのが概ねの現状です。なぜなら、初期治療は成功しても、長期的には、病気が再発したり、再治療が必要になったりするからです。たとえば、CABGには、その後の心筋梗塞を予防する効果がありますが、PCIにはその予防効果はありません。
病気の程度によりPCI、CABGのどちらかを選択するか、という目安がガイドラインには記載されていたりします。一例として、日本循環器学会のガイドライン掲載の表を提示します。
PCI or CABG
(日本循環器学会 虚血性心疾患に対するバイパスグラフとと手術術式の選択ガイドライン)
とは言っても、重症病変に対しPCIを施すという、チャレンジングケースは医療の進歩には必要です。現状に甘んじていてはいけません。
しかし、チャレンジングゆえにその結果は「不確実」になります。この不確実性には、カテーテル技術の熟達度に大きく左右されてきます。神業のような技術を持っている術者もいれば、そうでない術者もいます。神業の術者は、ごく一部です。そうでない術者が一般的です。
プロ野球選手にもイチローのような神選手もいれば、普通の一軍レギュラーもいるし、二軍の控えもいます。育成選手もいます。神業の術者はイチローみたいなものです。プロ野球選手=イチローではありません。PCI術者=神業技術ではありません。
ここでは、一般論を話しています。
当然、患者に不利益が及んだり、医療経済的に無駄が生じたりすることがあるわけです。それを平然と通常診療の中で行い、公的保険、税金をつぎ込むのは問題です。患者が十分にその方針に理解を示し、その上で、自費や研究費による運用であれば問題ないと思います。
また、チャレンジングなPCIを、日々の通常の治療かのごとく当たり前のように学会で供覧すると、それを見ていた若い医師が自分の病院に戻り、真似します。
職人技・神業のような命綱なしの綱渡りの曲芸を見た子供が、それを当たり前だと思って、真似するようなことが起こるわけです。
そして、治療成功のケースは、学会発表になるかもしれません。
一方、治療不成功のケースは、あまり表舞台に出ることはありません。
結果だけ見ると治療成功したように見えるケースも、実は、桁外れに多い治療器具や造影剤、放射線被曝、そしてバイパス手術よりもはるかに長い総治療時間を要していたりすることもあります。要は、成功したように見えても、労力やコストに見合っていなく、かつ心臓以外への副作用発症が懸念されるということです。
重症病変に対し、CABGでなく、PCIを選択する場合、その不可避な理由がない限りは、たとえば「臨床研究」として財源を公的保険から分離する、とか施設限定、術者限定にするとか、対策が必要かと思います。
いずれにしても、医師は、目の前の患者や自分のスキル、所属組織・施設の営利のみならず、医療全体を俯瞰した姿勢が必要かなと思ったりしています。
硬い記事を、最後までお読み頂き、ありがとうございました。