こんにちは。布施淳です。

医療の臨床試験、例えば、新しい薬や手術の試験で、その効果を最も端的に示す指標の1つが「生命予後」です。その治療で、より長く生きられるようになったか(=生命予後改善)、ということです。より高い生命予後改善効果を示す薬・手術が、より良い治療とされます。

その背景には、生命予後改善=善、長寿=善、といった概念が存在します。多くの医師が、健康第一、長寿が望ましいと考えているでしょうし、少なくともそのような方針で日々の業務を行っているはずです。僕もその1人です。いや、1人でした。

この本、かなり考えさせられる良著です。

 

 

健康を維持して長生きすることが、必ずしも善ではないとこの本では指摘しています。
内閣府による日本のデータでは、年齢が高くなるほど幸福度は下がっていきます。
日本人幸福度
(内閣府 平成20年版 国民生活白書より)
そして長く生きれば生きるほど、医療費もかかります。
生涯医療費
(厚生労働省 生涯医療費)
これらの統計から考えると、健康や長寿を目指しても、幸せになれないし、社会にも経済的に迷惑をかける、そんな見方もできるわけです。
毎月毎月医療機関に通い、効果がごく僅かあるいは不明確な医療を受けて、結果、少しだけ長生きするよりも、医療機関に通わずにその分空いた時間を好きなように楽しみ、少しだけ早く死ぬ、そんな生き方も、ありです。
この本は、現在の長寿を目指した「死なないための医療」から、必ずしも長寿を目指さないような多様な価値観を含めた「死ぬことを前提とした医療」への方向転換の必要性を説いています。
昨日のBlogにもでた岩田健太郎先生の本にもこのような一節があります。
「科学者や専門家でも、知識だけでなく、感情や信念、信条や価値観が行動を決定していることは多いものです。医者の診療なんてその典型ですね。医者は基本的に「健康至上主義」で、健康という価値を他のすべての価値に優先させる傾向にあります。」
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健康=善、長寿=善、健康至上主義という考えを否定するわけではありませんが、それが絶対、と考えるのは、思い込み、視野狭窄、固定観念、思考停止、です。そうでない考え方も受け入れていく柔軟性が求められると感じました。自分も気をつけなければいけないと思いました。
名郷直樹先生のこの本「「健康第一」は間違っている」。あまりに深い内容で、自分の考えもまとまっていません。もう少し時間をかけて、また少しづつ触れていきたいと思います。
今後の医療を考えていく上で、皆様にもお読み頂きたい本と思っています。