おはようございます!あいさつは先制攻撃!布施淳です。

心疾患は突然死の代表です。ある研究( Eur Heart J 1999; 20: 338-343 )によると、心疾患による突然死のうち、発症から1時間以内に52.7%が,1~ 3時間の間に24.4%が死亡しており,心疾患による突然死が,他の疾病に比較して死亡までの時間が非常に短い、ということが示されています。

中年男性の重症の狭心症の方が救急受診しました。胸痛発作が度々出現するそうです。狭心症に特徴的な心電図の変化も伴います。「不安定狭心症」です。「急性心筋梗塞」は心臓の血管(冠動脈)が突然閉塞し、心臓への血流が途絶え、心臓が腐る病気です。上記のような、突然死を来す代表的な病気です。「不安定狭心症」は「急性心筋梗塞」の一歩手前の病態です。「血管が閉塞しかかっている」というイメージです。

参考:循環器病情報サービス

原則的に入院管理が安全です。
診療ガイドラインでも入院管理が推奨されています。
医師は、当然入院を強く勧めます。
さて、この男性は、仕事の関係でどうしても入院できないと主張します。
そんな場合、

 

「入院しないのなら、死んでも良いということなんで、本人の勝手。面倒見切れない!」
という医師側の意見があります。多忙な救急業務の中、スムースに話が進まないイラつきもあるでしょう。気持ちはわかります。
自分の意見、スタンダードな医療・推奨に応じないゆえの、「あきらめモード」、「切り捨て」。言わば、スタンダードから逸れた「診療の放棄」。
でも、これは医師としてベストではないと感じました。

病状の説明をし、その深刻さを伝え、理解してもらいます。入院できない理由を可能な限り追求します。入院治療しない場合に起こりえる事象。この場合、最悪は突然死です。できれば、本人だけでなく、家族を交えて相談することが望ましいです。入院治療の重要性を十分に伝えた上で、それでも、どうしても入院できない事情があるのであれば、それは仕方ありません。本人の意思ですから。本人の希望通りの方針にします。最悪、死んでしまっても自己責任です(それでもその方針を許した医師の責任を追求されることがありますが。。。)。
でも、その患者も仕事をしているわけですから、彼は社会に貢献している労働力です。社会にとっての財産です。社会にとっても、死んでもらっては困るのです。
入院しないという、患者自身が選択する道において、できる限り安全性を高める努力をします。最善の処方を施し、生活の中の注意事項、生じる可能性のある事象に対する対応法、などを親身になってアドバイスしてあげます。ベストではない方針を可能な限り、ベストに近づけてあげる。これがプロフェッショナルの仕事と思います。

ガイドラインに沿う管理は、難しいことではありません。それは、プロフェッショナルの仕事ではないのかもしれません。ガイドライン通りにいかないケースこそが、プロフェッショナルの腕の見せ所と感じました。

 

ちなみに、このような入院を勧めても従わない場合、
・実は大した理由ではない
・ 家族の説得には応じる

ことが多いです。
説得に断固として応じない人を説得するのも、プロフェッショナルの仕事です。