医療従事者向けの二次心肺蘇生(ACLS)講習会というものがあります。
患者や傷病者が循環(心臓)や呼吸の異常を呈し、命が脅かされるような緊急事態に陥った場合に、チームメンバーを率いて迅速かつ適切な対応を施し、命を救うトレーニングです。

 

細かい知識や技術が多々ありますが、一つの重要なポイントは「チームダイナミクス」という概念です。航空業界の安全管理で活用されていた概念を医療の分野に応用したものとのこと。緊急事態(蘇生)に対応するチームメンバー(含リーダー)たちが心がけておく要素です。

 
Elements of Effective Resuscitation Team Dynamics  効果的な蘇生チームダイナミクスの要素
 
・Closed-Loop Communication クローズドループコミュニケーション(復唱)
・Clear Message 明確なメッセージ
・Clear Roles and Responsibilities 明確な役割と責任分担
・Knowing One’s Limitations 自己の限界の把握
・Knowledge Sharing 情報の共有
・Constructive Intervention 建設的介入
・Reevaluation and Summarizing 再評価とまとめ
・Mutual Respect 互いの尊重

 

私が主催しているその講習会の指導者たちに対し、ある人から「(指導者たちが)皆さん優しくて、質問しやすい、どんな質問も尊重して、丁寧に答えてくれる、居心地がよい、、、」といった意見を頂きました。

 

嬉しい言葉です。その方の職場の先輩や上司たちには、なかなか質問しずらいし、否定的な対応をとられたりと、よき学びの場となっていないと言います。
 
講習会の指導者たちの「優しさ」や「学びをサポートする対応」「居心地の良さ」は、元来の性格もあるでしょうが、多くは「スキル」だと思いました。

 
講習会の指導内容の1つである、上記チームダイナミクスを自ら実践するだけでも、その「優しさ」や「学びをサポートする」「良き環境を作る」対応は可能になります。講習会に集まる人たちも「チーム」です。相手の「自己の限界」を理解し、「互いの尊重」を大事にし、「明確なメッセージ」で対応する。
 

また指導者になるために、様々な「指導技術」や「指導態度」を学びます。例えば以下のようなことを学び、活用、実践します。

 

・効果的なコミュニケーション
・プロフェッショナルとしての信用の確立
・受講者が意欲的に、集中して学べるように働きかける
・ファシリテーションを効果的に行う
・効果的に質問を活用する
・明確な説明とフィードバックを与える
・学んだ知識やスキルを保持できるように促す

 
これは「インストラクターコンピテンシー」なるものの一部です。

 

こういった、様々な「スキル」を実践することにより、「皆、優しくて居心地がよい、質問しやすい、どんな質問も尊重して、丁寧に答えてくれる」という意見につながるのでしょう。相手が「優しさ」と感じることも、多くは「スキル」なのだと思います。